1929年の世界恐慌から考える|株価暴落より怖い「上がり続ける」という思い込み

投資の学び

株式市場が好調なときほど、「まだ上がるのではないか」と考えてしまいます。

実際、私自身も株式投資をしていると、強い銘柄を見て「少しくらい高くても買っておいた方がいいのでは」と思うことがあります。

しかし、株式市場の歴史を振り返ると、この感覚が大きなリスクにつながった時代がありました。

代表的なのが、1929年の株価暴落と、その後の世界恐慌です。

当時と現在では金融制度も市場環境も大きく異なるため、「1929年と同じ暴落が起きる」と考えるのは適切ではありません。

それでも、

なぜ人は上昇相場で強気になりすぎるのか

なぜ暴落後も経済危機が拡大したのか

を知ることには、現在投資をするうえでも意味があると感じています。

今回は1929年の株価暴落と世界恐慌について調べながら、個人投資家として何を意識したいのかを考えてみます。

1920年代のアメリカでは株価が大きく上昇した

1920年代のアメリカは経済成長が続き、自動車や電話などの新しい技術や製品も広がっていきました。

株式市場にも資金が流れ込み、ダウ平均は1921年8月の約63から1929年9月には約381まで上昇しています。

約8年間でおよそ6倍です。

さらに当時は、株式の購入代金の一部だけを自己資金で支払い、残りを借り入れる「信用取引」に近い仕組みも広く利用されていました。

Federal Reserve Historyによると、当時は株価の10%程度を支払い、残りを借り入れて購入するケースもありました。

つまり、

株価上昇 × 借入による投資

が重なることで、上昇相場にさらに資金が入りやすい環境が形成されていたことになります。

1929年10月、株式市場が急落する

状況が大きく変わったのが1929年10月です。

10月28日の「ブラックマンデー」にはダウ平均が約13%下落。

翌10月29日の「ブラックチューズデー」でも約12%下落しました。

しかし、本当に注目したいのはここからです。

1929年9月に381.17だったダウ平均は、その後も下落を続け、1932年7月には41.22まで低下しました。

ピークからの下落率は約89%です。

さらに1929年の高値を回復したのは1954年11月でした。

単純に指数だけを見ると、元の水準へ戻るまで25年近くかかったことになります。

この数字を見ると、「暴落したらすぐ買えばいい」と簡単には言えないことが分かります。

下落の途中では、どこが底なのか誰にも分からないからです。

世界恐慌は「株価が暴落したから」だけでは説明できない

ここは非常に重要です。

1929年の株価暴落を見ると、

「株価暴落が世界恐慌を引き起こした」

と考えてしまいそうになります。

しかし、実際の経済危機はそれほど単純ではありません。

Federal Reserve Historyでは、1929年の株価暴落に加えて、1930年以降の銀行危機や信用収縮、マネーサプライの減少、デフレなど複数の問題が重なり、大恐慌が深刻化していった経緯が説明されています。

特に1930年秋から銀行危機が広がり、預金者が一斉に銀行から資金を引き出そうとする「取り付け」が発生しました。

銀行が破綻すると融資も減少します。

企業が資金を調達しにくくなれば、設備投資や雇用も減ります。

失業者が増えれば、今度は消費が減ります。

すると企業業績がさらに悪化する。

この悪循環が経済全体へ広がっていきました。

お金そのものも急速に減っていった

世界恐慌を考えるうえでもう一つ重要なのが「デフレ」です。

Federal Reserve Historyによると、1930年秋から1933年冬にかけて、アメリカのマネーサプライは約30%減少しました。

物価も大きく下落しています。

一見すると「物が安くなるなら良いのでは」と思うかもしれません。

しかし、借金の金額そのものは物価と一緒に減ってくれません。

収入や企業の売上が減っているのに、借金の返済額は残る。

その結果、企業や個人の実質的な債務負担が重くなり、倒産や失業がさらに増えていきました。

1933年にはアメリカの失業率が約25%まで上昇し、経済全体の生産も大幅に縮小しました。

当時の政府は本当に「何もしなかった」のか

世界恐慌について調べていると、

「当時のフーヴァー政権は市場に任せて何もしなかった」

という説明を目にすることがあります。

ただ、これは少し単純化しすぎています。

フーヴァー政権下でも1932年に復興金融公社(RFC)が設立され、銀行や鉄道会社などへの緊急融資が行われました。

同年には公共事業や州の救済事業に資金を供給する制度も拡大されています。

一方で、こうした対応だけでは経済危機を止めることができず、銀行危機や失業はさらに深刻化しました。

その後、1933年にフランクリン・D・ルーズベルトが大統領に就任。

全国的な銀行休業措置やEmergency Banking Act(緊急銀行法)などが実施され、金融システムの立て直しが進められていきます。

1933年にはFDIC(連邦預金保険公社)も設立され、翌1934年から連邦レベルの預金保険制度が始まりました。

1929年と現在をそのまま比較してはいけない

ここも注意したいところです。

1929年の暴落を見て、

「今の株式市場も89%下落するかもしれない」

とそのまま当てはめることはできません。

現在の金融システムには、当時には存在しなかった、あるいは現在ほど整備されていなかった仕組みがあります。

例えば米国では、FDICによる一定範囲の預金保険制度があります。

また株式市場には、市場全体が急落した場合に取引を一時停止するマーケット・ワイド・サーキットブレーカーがあります。

2026年時点のNYSEの制度では、S&P500が前日終値から7%、13%、20%下落した場合に、それぞれ定められた取引停止措置が発動します。

中央銀行の制度や金融監督も大きく変わっています。

だからこそ、

「1929年に起きたこと=将来もう一度そのまま起きること」

として扱うべきではないと考えています。

歴史から学ぶ目的は、未来をそのまま予測することではなく、どのような状況でリスクが拡大しやすいのかを知ることだと思います。

私が一番怖いと思ったのは「暴落」ではなかった

今回、1929年について改めて調べていて、個人的に一番印象に残ったのは89%という下落率ではありませんでした。

それよりも怖いと感じたのが、

上昇している間は、その状態が普通に見えてしまうことです。

株価が上がる。

周囲も利益を出している。

少し下がってもすぐ戻る。

そうした状況が続けば、

「今回も大丈夫だろう」

「もっと資金を入れておけばよかった」

と思ってしまいます。

これは1920年代だけの話ではなく、今の投資でも起こり得る心理だと思っています。

成長企業と「何円で買ってもいい企業」は違う

私自身、成長株を見ることが多いため、ここは特に意識したいところです。

素晴らしい企業だからといって、

どんな株価でも買っていい

とは限りません。

業績が伸びていても、それ以上の成長期待がすでに株価へ織り込まれていれば、決算内容が良くても株価が下落することがあります。

反対に、市場全体が大きく下落すれば、企業そのものに大きな問題がなくても株価が下がることもあります。

だから私は、

「この会社は成長するか」

だけではなく、

「その成長を市場がすでにどこまで期待しているのか」

まで見る必要があると考えています。

私が1929年から学びたい3つのこと

今回調べて、今後の自分の投資でも意識したいと思ったことがあります。

一つ目は、生活に必要な資金まで投資に回さないことです。

株価がいつ戻るか分からない以上、必要になったタイミングで売却せざるを得ない状態はできるだけ避けたいと考えています。

二つ目は、上昇相場ほど資金管理を崩さないことです。

利益が増えるとリスクを取りやすくなります。

しかし、相場環境が変わるタイミングを正確に当て続けることは難しいため、一度に資金を投入しすぎないことも重要だと思っています。

三つ目は、企業の将来性と株価を分けて考えることです。

好きな企業、伸びている企業、将来有望だと思う企業でも、株価には市場参加者の期待が含まれています。

企業への期待が強くなるほど、期待通りではなかったときの株価反応が大きくなる可能性があります。

暴落を予想するより、暴落しても続けられる投資をしたい

1929年の暴落を事前に完璧に予測できた人は多くありません。

そして今後の暴落も、正確な時期や規模を予測することはできません。

だから私は、

「次の暴落はいつ来るのか」

を当てることより、

「想定外の下落が来ても投資を続けられる状態か」

を考える方が大切だと思っています。

現金を残す。

一つの銘柄に集中しすぎない。

借入に頼りすぎない。

企業の成長性だけでなく株価水準も見る。

文字にすると当たり前のことばかりです。

しかし、1920年代の株式市場を振り返ると、相場が好調なときほど、その当たり前を守ることが難しくなるのだと感じます。

まとめ

1929年の株価暴落では、ダウ平均が最終的にピークから約89%下落しました。

ただし、その後の世界恐慌を「株価暴落だけ」で説明することはできません。

銀行危機、信用収縮、デフレ、失業増加などが連鎖し、経済危機が深刻化していきました。

一方、現在は預金保険制度や市場のサーキットブレーカーなど金融制度も大きく変わっています。

そのため、1929年と現在を単純に比較することはできません。

それでも私が歴史から学びたいのは、

強い相場ほど「この状態が続く」と思わないこと。

そして、

予想が外れても続けられる範囲で投資すること。

です。

未来の株価を完全に予測することはできません。

だからこそ私は、上昇を取り逃さないことだけでなく、大きく下落したときにも市場に残っていられる資金管理を意識していきたいと思います。

免責事項

本記事は、株式市場の歴史や筆者個人の考えを紹介することを目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。

掲載内容は公開時点で確認可能な情報をもとに作成していますが、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。

投資には元本割れを含むリスクがあります。実際の投資判断は、ご自身の資産状況や目的、リスク許容度などを踏まえ、ご自身の責任で行ってください。

主な参考資料

Federal Reserve History
「Stock Market Crash of 1929」
「The Great Depression」
「Banking Panics of 1930-31」
「Emergency Banking Act of 1933」

Federal Deposit Insurance Corporation(FDIC)
「The History of FDIC」
「Understanding Deposit Insurance」

New York Stock Exchange(NYSE)
「Market-Wide Circuit Breakers FAQ」

Herbert Hoover Presidential Library and Museum
「The Great Depression」

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