生成AI市場の拡大で注目される企業といえば、半導体メーカーを思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、AIを動かすためには半導体だけでなく、大量のデータを高速でやり取りする通信網や、サーバーから発生する熱を処理する冷却設備など、データセンターを支えるインフラも必要です。
そこで今回注目するのが、**古河電気工業(5801)**です。
同社は光ファイバや光通信関連製品に加え、データセンター向けの放熱・冷却製品なども手がけています。
2026年8月6日に発表された2027年3月期第1四半期決算では大幅な増収増益となり、通期業績予想も上方修正されました。
今回は、古河電工の事業内容、直近決算、会社予想と市場予想の差、そして今後確認したいポイントを整理します。
※本記事の情報は2026年8月23日時点の公開情報をもとにしています。
古河電気工業とは?
古河電気工業は、1884年創業の電線・非鉄金属メーカーです。
現在は単なる「電線会社」ではなく、光ファイバを中心とした情報通信、電力インフラ、自動車関連、電子部品・材料、放熱・冷却など幅広い事業を展開しています。
その中でもAI・データセンター市場との関係で注目したいのが、情報通信とデータセンター関連製品です。
古河電工は光通信の総合メーカーとして、
- 光ファイバ
- 光ファイバケーブル
- 光コネクタ
- 光通信用デバイス
- データセンター向け冷却製品
などを展開しています。
データセンターでは大量のデータを高速に送受信する必要があるため、通信容量の拡大に対応する光通信技術が重要になります。
さらに生成AIの普及によってGPUなどの高性能半導体の使用が増えれば、サーバーの発熱量も大きくなります。
古河電工はヒートシンクやベーパーチャンバー、液冷向け製品なども展開しており、通信だけでなく冷却という側面からもデータセンター市場に関わっています。
なぜ今、古河電工に注目するのか
最大の理由は、AI・データセンター関連需要が実際の業績に表れ始めていることです。
会社側も2027年3月期について、データセンター市場の活況と関連製品の需要を業績拡大の重要な要因として挙げています。
2026年8月6日に発表された第1四半期決算は、
売上高:3,652億円
営業利益:254億円
経常利益:309億円
純利益:222億円
となりました。
前年同期と比較すると、
売上高:+24.3%
営業利益:約3.1倍
経常利益:約4.0倍
純利益:約4.4倍
です。
売上高の増加だけではなく、利益の伸びが非常に大きくなっている点が今回の決算の特徴です。
市場予想と比較しても強かった1Q
決算を見るときに重要なのは、前年同期比だけではありません。
株価は「良かったか悪かったか」ではなく、市場が事前にどこまで期待していたかによって反応が変わるからです。
8月6日の決算発表前におけるIFISコンセンサスでは、第1四半期の経常利益は約187億円と予想されていました。
これに対し実績は約310億円。
市場予想を約65.8%上回る結果となりました。
営業利益や純利益についても事前の市場予想を上回っており、今回の1Qは市場の高い期待をさらに超えた決算だったといえます。
通期予想も大幅に上方修正
古河電工は1Q決算と同時に2027年3月期の通期業績予想を引き上げました。
従来予想
売上高:1兆4,600億円
営業利益:950億円
経常利益:1,000億円
純利益:820億円
8月6日時点の最新会社予想
売上高:1兆5,300億円
営業利益:1,230億円
経常利益:1,430億円
純利益:1,050億円
従来予想との比較では、
売上高:約+4.8%
営業利益:約+29.5%
経常利益:+43.0%
純利益:約+28.0%
の上方修正です。
特に売上高の修正幅に比べて利益の引き上げ幅が大きく、収益性の改善が業績を押し上げている点は注目したいところです。
会社予想とコンセンサスを比較
次に、現在の市場予想と比較します。
2026年8月中旬時点の市場コンセンサスはおおむね、
売上高:約1兆4,796億円
営業利益:約1,080億円
経常利益:約1,220億円
純利益:約940億円
となっています。
これに対する会社予想は、
売上高:約+3.4%
営業利益:約+13.9%
経常利益:約+17.2%
純利益:約+11.7%
上回っています。
一般的に会社予想が市場予想より低い場合、今後の下方修正を警戒されるケースがあります。
今回は逆に、会社側が市場予想を上回る利益計画を提示している状態です。
これはポジティブな材料ですが、同時に注意も必要です。
会社自身が高い目標を掲げたことで、今後は「前年より増益しているか」だけではなく、この高い会社計画に対して順調に進捗できているかがより重要になります。
AI・データセンター需要はどこまで続くのか
古河電工の成長を考えるうえで、今後の重要テーマの一つがデータセンター投資です。
生成AIの利用拡大によって扱われるデータ量が増えれば、高速・大容量通信への需要も高まります。
古河電工は光ファイバだけでなく、光デバイスやコネクタ、さらに冷却関連製品までデータセンターに関連する複数の製品を持っています。
会社側も情報通信分野について、AI・データセンター市場の力強い成長継続を想定しています。
そのため、
AI需要拡大
↓
データセンター投資増加
↓
高速通信・大容量化
↓
光通信関連製品の需要増加
という流れは、古河電工にとって追い風になる可能性があります。
ただし、AI市場の成長がそのまま古河電工の利益増加につながるとは限りません。
顧客企業の設備投資計画、競争環境、製品価格、為替など複数の要因が実際の業績を左右します。
強み① 光通信に幅広く関われる
古河電工の特徴の一つは、光ファイバだけを販売している会社ではないことです。
光ファイバ・ケーブルから光デバイス、コネクタ、通信システムまで幅広い製品を持っています。
今後データセンターの高速化・大容量化が進めば、通信インフラに求められる性能もさらに高くなる可能性があります。
同社は次世代データセンターを意識した光電融合技術などの研究開発にも取り組んでおり、将来の通信インフラ高度化に関われる点は中長期で確認していきたい部分です。
強み② データセンターの「冷却」にも関わる
AI向けデータセンターでは、高性能GPUなどの利用によって発熱量が増えることが課題となっています。
古河電工は、
- ヒートシンク
- ベーパーチャンバー
- 3Dベーパーチャンバー
- 液冷向けコールドプレート
などの放熱・冷却ソリューションを展開しています。
AI関連企業というと半導体や通信に目が向きがちですが、データセンターの高性能化に伴って熱をどう処理するかも重要になります。
この分野にも事業を持っていることは、古河電工を見るうえで一つの特徴です。
一方で確認しておきたいリスク
ここまでを見ると非常に好調ですが、「好業績=株価が必ず上がる」とは限りません。
特に確認したいのは次の4点です。
① AI・データセンター投資の減速
現在の業績にはデータセンター関連需要の強さが寄与しています。
そのため、大手テクノロジー企業などが設備投資を減速させれば、関連製品の需要に影響する可能性があります。
② 高い市場期待
1Qは市場予想を大きく上回りました。
さらに会社側も通期予想を大幅に引き上げています。
業績が好調であっても、市場がそれ以上の成長を期待する状態になれば、次回以降の決算で「良い数字なのに株価が下がる」ということも起こり得ます。
重要なのは絶対的な業績だけでなく、市場期待との比較です。
③ 為替・原材料価格
古河電工は海外事業も展開しているため、為替変動の影響を受けます。
また、電線・非鉄金属を扱う企業である以上、銅をはじめとする原材料価格の変動も売上高や収益性を見るうえで無視できません。
単純に売上高だけを見るのではなく、利益率や為替・原材料の影響も確認する必要があります。
④ 大規模な設備投資
需要拡大に対応するには生産能力の増強も必要になります。
成長投資は将来の売上拡大につながる可能性がある一方、需要が想定ほど伸びなければ投資負担となる可能性もあります。
設備投資額だけではなく、今後は投資に見合った利益とキャッシュフローを生み出せているかも確認したいところです。
次の決算で見るべきポイント
今後の古河電工を見るなら、株価そのものよりまず業績を確認したいと考えています。
特に注目したいのは、
① データセンター関連需要が継続しているか
② 情報通信関連の利益が伸びているか
③ 営業利益率が維持・改善しているか
④ 上方修正後の会社計画に対する進捗
⑤ 会社予想と市場コンセンサスの差
です。
今回の1Qでは非常に強い数字が出ました。
だからこそ次回決算では、「増益しているか」だけではなく、今回引き上げた通期計画を達成できるペースなのかを見ることが重要になります。
まとめ
古河電気工業は、電線メーカーというイメージだけでは捉えきれない企業です。
現在は光通信やデータセンター関連製品など、AI時代のインフラを支える複数の事業を持っています。
2027年3月期1Qでは、
売上高3,652億円
営業利益254億円
経常利益309億円
純利益222億円
と大幅な増収増益を達成。
経常利益は決算前の市場コンセンサスを約65.8%上回り、通期経常利益予想も1,000億円から1,430億円へ上方修正されました。
現在の会社予想は市場コンセンサスよりも高い水準にあります。
これは今後の成長期待につながる一方、次回以降の決算に求められるハードルが上がったとも考えられます。
個人的には、「AI関連銘柄だから」という理由だけではなく、
データセンター需要 → 実際の受注 → 売上 → 利益 → 通期計画達成
までつながっているかを今後も確認していきたい企業です。
主な参考資料
・古河電気工業「2027年3月期 第1四半期決算短信」2026年8月6日
・古河電気工業「2027年3月期 第2四半期(中間期)および通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」2026年8月6日
・古河電気工業「情報通信ソリューション」製品・研究開発情報
・古河電気工業「放熱・冷却製品/データセンターソリューション」
・IFISコンセンサス(株予報Pro掲載データ、2026年8月時点)
※本記事は公開情報をもとに企業を分析したものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。将来の業績や株価を保証するものでもありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。

